近年のコンピュータビジョン研究では、従来のように幾何的な側面のみに注目するのではなく、光の物理法則を考慮した画像処理(Physics-Based Computer Vision、 PBCV)の重要性が強く意識されるようになっています。我々の研究室においては、PBCVをベースに、偏光を利用した透明物体の形状計測、複雑なテクスチャを持つ物体画像からのハイライト成分の分離などに関する研究を進めています。

    透明物体の形状計測

    鏡面反射成分の除去

    スペクトル計測による光源及び反射率の推定

    光源色の推定及び影の除去

 

透明物体の形状計測

 我々の研究室が取り組んでいるテーマの1つとして物体の三次元形状の測定がある.しかし透明物体のおいては三次元計測において一般的に用いられるレーザー光が透過してしまうために三次元形状を計測できない.

 

透明な物体の3次元形状を計測する手法を開発した.物体で反射・透過した光の偏光状態を観測し,偏光レイトレーシング法の逆問題を解くことにより,透明物体の3次元形状を推定した.

主な発表文献

      Daisuke Miyazaki, Katsushi Ikeuchi, "Polarization-based Shape Estimation of Transparent Objects for Digitizing Cultural Assets," in Proceedings of International Symposium on the CREST Digital Archiving Project, pp. 34-41, Tokyo, Japan, 2005.03

      Daisuke Miyazaki, Katsushi Ikeuchi, "Inverse Polarization Raytracing: Estimating Surface Shape of Transparent Objects," in Proceedings of International Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR2005), San Diego, CA USA, 2005.06 to appear

      宮崎大輔, 池内克史, "文化財のデジタル保存のための偏光を用いた透明物体形状計測手法," 3D映像 (三次元映像のフォーラム), Vol.18, No.4, pp.12-22, 東京, 2004.12

      宮崎大輔, 池内克史, "偏光レイトレーシング法による透明物体の表面形状の推定手法," 電子情報通信学会論文誌D-II, Vol. J88-D-II, No.8, pp. 118-126, 2005.08 to appear

 

鏡面反射成分の除去

撮影される画像において光源が画像上に移りこんでしまう場合がある.それらを鏡面反射と呼ぶが、様々な画像処理において非常に邪魔な成分である,

我々の研究室では画像における色の分布を求めることで光源色を推定し、また鏡面反射成分を取り除いた.

主な発表文献

      Robby T. Tan, Ko Nishino, Katsushi Ikeuchi, "Separating Reflection Components Based on Chromaticity and Noise Analysis," IEEE TRANSACTIONS ON PATTERN ANALYSIS AND MACHINE INTELLIGENCE, Vol. 26 No. 10, pp.1378-1379, 2004年10月

      Imari Sato, Yoichi Sato, and Katsushi Ikeuchi, Illumination from shadows, IEEE Trans. Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol.25, No.3, pp.290-300, 2003.3

      Daisuke Miyazaki, Masataka Kagesawa, Katsushi Ikeuchi, Transparent Surface Modeling from a Pair of Polarization Images, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol.26, No.1, pp.73-82, 2004.1

      Robby T. Tan, Ko Nishino, Katsushi Ikeuchi, Color constancy through inverse-intensity chromaticity space, Optical Society of America, Vol.21, No.302, 2004.

 

スペクトル計測による光源及び反射率の推定

 一般的に画像処理においてはRGBの3チャンネルのデータが用いられる.しかし画像処理においてはそれらの情報だけでは不十分である場合が多い.

我々の研究室ではRGBのデータではなくスペクトルを用い、複数の反射光スペクトルを用いる事で制約を増やして光源スペクトル及び反射率分布とに分離した.それらの複数のスペクトルは同一光源下異物体・異光源下同一物体・内部反射鏡面反射のスペクトルの3種類であるである。またそれらの分離の手法をinterference filterを用いて得た多波長画像に対して適用し、光源スペクトル・反射率画像を取得した.

主な発表文献

      Akifumi Ikari, Robby T. Tan, Katsushi Ikeuchi, "Separating Illumination and Surface Spectral from Multiple color Signals," Asian Conference on Compuyrt Vision (ACCV2004), Vol.1, pp.264-269, 20041

      猪狩 壮文,タン・ロッビタントウィ, 池内 克史, "Interference filterを用いた多波長データ取得のためのスペクトル変換関数の推定," 「画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2004), 20047

    猪狩壮文, Robby T. Tan, 池内克史, "Interference filterを用いて取得した反射光スペクトルの光源スペクトル・分光反射率分離," 「画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2004), 20047

 

光源色の推定及び影の除去

物体の見えは光源色によって大きく変化する.そしてその光源色の変化を考慮した補正は色恒常性として幅広く研究されている.

我々は自然光源の黒体輻射光源による仮定を導入することで、異なる光源下で撮影された同一物体の色値から光源色及び物体の反射率の推定を行った.また影における光源を同等に推定することにより影の検出を行い画像上の影の除去を行った.

主な発表文献

      R. Kawakami, R. T. Tan, and K. Ikeuchi, ``A Robust Framework to Estimate Surface Color from Changing Illumination,'' Proc. of 2004 , ACCV, Jan., 2004

      川上玲,タン・ロッビタントウィ,池内克史, "光源環境の変化を利用した物体の色推定," 「画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2004)」, 2004年7月

 

 

 

池内研究室ホームページ:http://www.cvl.iis.u-tokyo.ac.jp/index.html

Ikeuchi Lab, The University of Tokyo, 2005