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不確かさのモデリング

属性に関しては、モデルの属性として何を使うべきかということと、ハッシュ テーブル構築の際に属性値の不確かさをどう取り扱うかが問題である。視点の 変化に対して不変な属性のみが有効であることは言うまでもない。視点の変化 に対して不変な属性の中から、ハッシュテーブルを構築する上で最も有効な属 性を MULTI-HASH は自動的に選択しなければならない。これは、各属性の不確 かさを考慮することで達成される。

Figure 2.5

不確かさは、観測された属性値が例えば周囲光・光センサの光と物体の面の成 す角度・量子化に伴う誤差など多くの要因に依存していることに起因する。例 えば、Figure 2.5 に示すように、同じ面でもセンサの光軸と面の法線との角 度が異なると観測される色も異なる。

Figure 2.6

前期の通り、インタラクティブトレーニングでは、1つのモデルの LFS に対 して、複数の画像中の LFS の対応を許す。簡単のために2属性2 LFS の場合 を考えると、例えば Figure 2.6 のように画像中の LFS がプロットされる。 ここで、LFS X は1番目のモデルの LFS に対応するもので、LFS O は、2番 目のモデルの LFS に対応するものである。このプロットされた離散点は、実 際には不確かさに起因するある連続分布をサンプルしたものであるが、この離 散点だけを用いて領域分割をしてしまうと、図の V や VI の領域には全く LFS O が存在しないことになり、これはおかしい。そのため、このサンプル点 から属性値の分布を推定することが重要である。MULTI-HASH では属性値の分 布がガウス分布であると仮定して分布を計算する。(この仮定の検証について は、[11,49]を参照)

あるモデルの $LFS_{j}$ の属性 $a_{i}$ の分布は、次のような1次 (single-mode)のガウス分布として表される。


\begin{displaymath}f_{j}^{i}(a_{i}) = \frac{1}{\sigma_{i}\sqrt{2 \pi}} exp\{ -(a_{i} -
\eta_{i})^{2} / 2 \sigma_{i}^{2}\}\end{displaymath}

$\eta_{i}$ は平均値で、$\sigma_{i}$ は標準偏差である。一方、一次のガウ ス分布では具合いが悪い場合に必要な次数を求める方法([13,20,61]参照)や、 ガウス分布の適切性を判定する方法(goodness-of-fit)([11,49]参照)が提案 されている。この判定法を用いた結果、ガウス分布の正当性の仮定が棄却され る確率は1割であることが分かった。ガウス分布を用いるもう1つの利点とし て、大きく外れた点(outlier)を除去できることが挙げられる。

ガウス分布はその属性値空間全体に広がっているが、実際には有限な範囲を扱 う必要があるため、分布関数を切り詰める必要がある。下限を$x_{l}$、上限 を$x_{r}$とすると、切り詰めた分布関数は下のように表される。

\begin{eqnarray*}
f(a) & = & \frac{1}{(\sigma \sqrt{2 \pi} \times A(x_{l},x_{r})...
...sigma \sqrt{2
\pi}} exp( -(a-\eta)^{2}/2\sigma^{2} )\delta a \\
\end{eqnarray*}



$x_{l}$,$x_{r}$の値としては、$n$個のサンプルがある場合 $x_{l}=x_{1}$,$x_{r}=x_{n}$とすることで最も一致度を高めることができる。 また、モデリングの自由度を高めるために、 $x_{l}=\eta - k \times
\sigma$, $x_{r}=\eta + k \times \sigma$ と選ぶこともできる。

不確かさがガウス分布を成すかどうか分からない場合、もしくは goodness-of-fit を適用したくない場合には、ユーザは不確かさが一様に分布 しているとすることができる。この場合、分布関数は下のように表される。

\begin{eqnarray*}
f^{i}_{j}(a_{i}) & = & \frac{1}{(a_{\mbox{max}} - a_{\mbox{min...
...in}} \le a_{i} \le a_{\mbox{max}} \\
& = & 0 \mbox{ ,elsewhere}
\end{eqnarray*}





OGAWARA Koichi 平成12年9月20日