MIRACLE-IV は、物体のさまざまな形状を映した一連のシルエット画像を提示 されることによって、物体の構造の記述と画像処理の戦略を自動的に学習する。 一連の元画像をFigure 7.1に示す。システムは、さまざまな形状を映したシル エット画像から物体の内部構造を計算し、適切なモデルを生成する。さらにシ ステムは、内部構造と画像上の特徴点(Figure 7.2)の対応付けを行う。この対 応付けによって、ある種の類似性(analogy)(もしくは確信(belief))がシス テム上に生成される。この確信とは、もし物体のある部分の画像上の特徴が他 の部分の画像上の特徴と似ているならば、その機能も等しいであろうというも のである。この確信は、物体の内部構造を効率的に推定することに使用される。 また画像上の特徴を検出する画像処理は、前もって与えられるわけではなく試 行錯誤によって自動的に学習される。
前に述べたように、システムはモデル獲得部と画像処理決定部の2つから構成 され、前者は物体の内部構造を推定しその機能を抽出する。後者は、内部構造 と実画像上の特徴との関連付けを行う。
モデル獲得部は、物体は蝶番・滑り部・剛体から構成されるということと、物 体の形状の変化は2次元的であるということを前提知識として持っており、そ れから物体の蝶番・滑り部・剛体の数とその相互関係を学習する。一方画像処 理決定部は、一連の画像処理モジュール群(SPIDER 画像処理ソフトウェアパッ ケージとほぼ同じ)の存在と、そのモジュール同士を連結する際の拘束条件を 前提知識として持っている。画像処理決定部は、試行錯誤によって獲得された 成功例を組み合わせることで、画像処理モジュール列の戦略的な知識をコンピュー タ上に蓄積する。
上で述べたように、モデル獲得部の持つ知識は、画像処理決定部の持つ知識と 分離されている。モデル獲得部は画像処理モジュールに関して何も知らず、画 像処理決定部は物体の内部構造について何も知らない。MIRACLE-IV の学習は、 モデル獲得部と画像処理決定部との相互作用によってなされる。このような2 つのサブシステムから構成される MIRACLE-IV は、汎用的なシステムの構成を 可能にする。なぜなら、画像処理決定部に蓄積される戦略的な(画像処理の) 知識は、特定の物体の構造から独立しているからである。モデル獲得部がシン ボル記述を操作する一方、画像処理決定部はパターン情報を処理し、必要に応 じて両者は情報を交換する。MIRACLE-IV において、概念の学習に実画像デー タを用いることは本質的な意味がある。
モデル獲得部の構成(Mechanism)は、どんな種類の物体を認識するかに強く依 存する。MIRACLE-IV の扱う物体は、コンパスやはさみ・定規などの単純な道 具や器具である。実用的な道具は、不必要な飾りがついていないため、一般に その画像上の特徴と機能の対応付けを簡単に行うことができる。